目次7章 / 7項目
  1. 滑る客は、長く泊まり、地方へ行き、多く使う
  2. 日本人客は減り、外国人の比率が上がっている
  3. 台湾客がゲレンデに来るのは、1月と2月の連休
  4. 雪を見たことがないビギナー客は、どこでつまずくか
  5. 台湾側で見つけてもらう入り口
  6. 国の補助事業では、受け入れ整備が対象に挙がっている
  7. まとめ

スノーリゾートに来る訪日客は、ふつうの訪日客より長く泊まり、地方へ行き、多くお金を使います。観光庁が2025年6月に公開した資料によると、スキー・スノーボードを実施した訪日客の一人当たり旅行中支出は29.3万円で、訪日客全体の20.8万円の約1.4倍でした。

台湾は亜熱帯で、雪は降りません。だから雪そのものが商品になります。一方で、来るのは装備も経験も持っていないビギナー客です。このニーズをうまく捉えられるかどうかで、スキー場インバウンドの結果が変わります。

滑る客は、長く泊まり、地方へ行き、多く使う

29.3万円

一人当たり旅行中支出

訪日客全体は20.8万円

93.2%

地方訪問率

訪日客全体は51.0%

13.9日

平均滞在日数

訪日客全体は10.3日

地方訪問率とは、三大都市圏(東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、京都、兵庫)以外の都道府県を訪問した人の割合です。滑る客の93.2%が三大都市圏の外へ出ています。訪日客全体では51.0%ですから、約1.8倍です。

5年前と比べると、差は開いています。訪日客全体がほぼ横ばいなのに対し、滑る客の支出だけが伸びています。

一人当たり旅行中支出の変化

単位:万円 スキー・スノーボード観光客は19.1→29.3万円。訪日客全体は13.7→20.8万円

  • スキー・スノーボード観光客
  • 訪日客全体
2018年2018年2018年 スキー・スノーボード観光客: 19.1万円19.1万円2018年 訪日客全体: 13.7万円13.7万円2023年2023年2023年 スキー・スノーボード観光客: 29.3万円29.3万円2023年 訪日客全体: 20.8万円20.8万円
2018年2018年 スキー・スノーボード観光客: 19.1万円19.1万円2018年 訪日客全体: 13.7万円13.7万円2023年2023年 スキー・スノーボード観光客: 29.3万円29.3万円2023年 訪日客全体: 20.8万円20.8万円

地方訪問率は、訪日客全体が53.7%から51.0%へ下がった一方で、滑る客は86.4%から93.2%へ上がりました。

地方訪問率の変化

単位:% 三大都市圏以外の都道府県を訪問した人の割合

  • スキー・スノーボード観光客
  • 訪日客全体
2018年2018年2018年 スキー・スノーボード観光客: 86.4%86.4%2018年 訪日客全体: 53.7%53.7%2023年2023年2023年 スキー・スノーボード観光客: 93.2%93.2%2023年 訪日客全体: 51%51%
2018年2018年 スキー・スノーボード観光客: 86.4%86.4%2018年 訪日客全体: 53.7%53.7%2023年2023年 スキー・スノーボード観光客: 93.2%93.2%2023年 訪日客全体: 51%51%
平均滞在日数の変化

単位:日 滑る客は12.2→13.9日。訪日客全体は9.8→10.3日

  • スキー・スノーボード観光客
  • 訪日客全体
2018年2018年2018年 スキー・スノーボード観光客: 12.2日12.2日2018年 訪日客全体: 9.8日9.8日2023年2023年2023年 スキー・スノーボード観光客: 13.9日13.9日2023年 訪日客全体: 10.3日10.3日
2018年2018年 スキー・スノーボード観光客: 12.2日12.2日2018年 訪日客全体: 9.8日9.8日2023年2023年 スキー・スノーボード観光客: 13.9日13.9日2023年 訪日客全体: 10.3日10.3日
観光庁「訪日外国人消費動向調査」2018年・2023年(第1回 国際競争力の高いスノーリゾート形成促進に向けた検討委員会 資料2、2025年6月19日)。在留資格が「90日以内の短期滞在」である者に限って算出。

日本人客は減り、外国人の比率が上がっている

日本人のスキー・スノーボード人口は、2015年の740万人から2023年の460万人まで減りました。

日本人のスキー・スノーボード人口

単位:万人 2015年の740万人から2023年の460万人へ。8年で280万人減った

2015年 日本人のスキー・スノーボード人口: 740万人740万人2018年 日本人のスキー・スノーボード人口: 510万人510万人2019年 日本人のスキー・スノーボード人口: 430万人430万人2023年 日本人のスキー・スノーボード人口: 460万人460万人2015年2018年2019年2023年

この減り方は、人口構成から来ているので、国内客が自然に戻ることは期待しにくい状況です。雪山の売上を保つ側は、外からの客を増やすしかありません。

その外からの客は、一度88.0万人まで伸びた実績があります(2018年、スノーリゾート地域を訪れた訪日外国人の推計)。コロナで落ち込み2023年は54.9万人ですが、訪日客全体は2024年に3,687万人と過去最高を更新しました。雪のインバウンドは、全体の回復にまだ追いついていません。裏を返せば、戻る余地がそのまま残っているということです。

2023年の訪問者の内訳を見ると、雪山のインバウンドというと欧米豪の長期滞在が話題になりますが、人数では4人に3人がアジアからの客です。

スノーリゾート地域を訪れた訪日外国人の内訳(2023年)

単位:% 観光庁の資料に示された区分。アジアが約74%、欧米豪が約23%

アジアアジアアジア 構成比: 74%74%欧米豪欧米豪欧米豪 構成比: 23%23%
アジアアジア 構成比: 74%74%欧米豪欧米豪 構成比: 23%23%
日本人のスキー・スノーボード人口は公益財団法人日本生産性本部「レジャー白書」。訪日外国人の推計値は、訪日外国人旅行者数に観光庁「訪日外国人消費動向調査」の「スキー・スノーボードを実施」の割合を乗じて観光庁が算出(同 資料2)。

台湾客がゲレンデに来るのは、1月と2月の連休

台湾客は、日本のスキーシーズンの感覚ではなく、台湾の連休で動きます。2027年の冬は、ここに集中します。

時期台湾側の事情
2026年12月25日〜28日第17回 台北国際冬季旅行展(世貿一館)。冬の旅行商材が店頭に並ぶ
2027年1月1日〜3日元旦の3連休
2027年2月4日〜10日除夕・春節の7連休。訪日の最大の山

春節の航空券は3〜4か月前から埋まり始めます。2027年春節に向けた台湾側の予約受付は、2026年12月中旬には動き出します。逆算すると、繁体字の素材と料金の提示は11月のうちに用意しておく必要があります。

台湾の祝日と商戦の時期を1枚にまとめたものは、台湾インバウンド戦略カレンダー 2027年版で配布しています。

雪を見たことがないビギナー客は、どこでつまずくか

ここからは数字ではなく、現地台湾での経験則と、現地の旅行会社の商品の組み方から書きます。

01

装備を何も持っていない

スキーウェア、手袋、ゴーグル、ニット帽。台湾の家庭には、どれもありません。スキー板とブーツだけ貸し出す設計だと、客は「他はどこで買うのか」で詰まります。ウェア一式のレンタルがあるか、サイズは何から何まであるかを、料金と一緒に先に出してください。台湾客は日本人より小柄な人の比率が高く、レディースのSやキッズの在庫から先に切れます。

02

滑らない人が同行している

雪を見に来る家族連れでは、滑るのは一部です。祖父母や小さい子どもは、雪に触って写真を撮って終わります。滑らない人の過ごし場所と料金が決まっていないと、グループごと来ません。そり遊びの区画、暖かい休憩所、リフト券を買わない人の入場の扱い。ここを書いておくだけで、検討の対象に入ります。

03

着いてからの移動が読めない

雪道の運転は、雪のない国から来た人には選択肢になりません。最寄り駅や空港からの送迎の有無、時刻、予約の要否が分からないと、個人客は手前で諦めます。団体なら旅行会社がバスを手配しますが、個人で来る客にとっては、ここが落とし穴になります。

これらは、どれも大がかりな設備投資ではありません。すでにあるものを、相手が判断できる形で書き出す作業です。

台湾側で見つけてもらう入り口

台湾客に届く経路は、大きく2つです。

ひとつは旅行会社経由です。台湾では、冬の日本旅行はパッケージで売られることが多く、商品は秋のうちに組まれます。台北国際冬季旅行展(2026年12月25日〜28日、世貿一館)は、組み上がった商品が消費者に向けて並ぶ場です。ここに載るには、その前の商談で決まっている必要があります。

もうひとつはFIT(個人旅行者)です。台湾からの訪日は個人旅行が主流で、雪を目的に来る客も、旅行会社のパッケージを使わず自分で組む人が増えています。

ここを取りにいくなら、狙うのは「旅マエ」よりさらに手前、行き先がまだ決まっていない「プレ旅マエ」の段階です。台湾客の多くは日本に何度も来ています。「日本に行くかどうか」ではなく「この冬はどこへ行くか」で迷っているときに、雪が候補へ入れるかどうかで決まります。

STEP 01

ウェブ広告は連休の3〜4か月前から

スキー場の名前で検索されるのは、行き先が決まったあとです。その手前の、「この冬の日本旅行をどうするか」で探している層に当てます。過去に訪日した人へのリターゲティングも、この段階では効きます。媒体ごとの費用の目安は台湾向け広告の媒体と費用にまとめています。

STEP 02

SNSは「滑る映像」より「初めての雪」

上手に滑る映像は、台湾では自分ごとになりません。手袋を外して雪に触る、子どもが雪玉を作る、息が白い。こうした画のほうが伸びます。滑らない同行者がいる前提で、家族が雪のなかにいる様子を見せてください。

STEP 03

繁体字のLPを着地点にする

広告とSNSから来た人が、最後に見る1ページです。リフト券の種類と料金、レンタルの中身とサイズ、送迎、滑らない人の過ごし方。前の節のつまずきどころへの答えを、ここに集めます。ただし日本語のページをそのまま訳しても伸びません。理由は台湾向けLPが伸びない理由に書いています。

国の補助事業では、受け入れ整備が対象に挙がっている

観光庁は「国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業」を令和2年度から続けています。令和7年度の予算額は13億3,800万円、補助率は2分の1、補助の対象者はDMOや民間事業者等です。

事業内容として挙げられているのは、スキー場インフラの整備(索道施設、降雪機、ICゲートシステム等)のほか、次のものです。

  • 受入環境整備(多言語対応、Wi-Fi整備、キャッシュレス、スキーヤー向け設備、DX対応等)
  • 外国人対応が可能なインストラクターの確保
  • 二次交通の確保
  • 情報発信(プロモーション素材の作成等)

申請は増えています。令和6年度の138事業に対し、令和7年度は191事業。このうち受入環境整備事業は52事業から75事業に増えました。

要件や締切は年度ごとに変わります。実際に使えるかどうかは、観光庁の公募要領でご確認ください。

観光庁「国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業」(第1回 国際競争力の高いスノーリゾート形成促進に向けた検討委員会 資料2、2025年6月19日)

まとめ

  • 滑る客の一人当たり旅行中支出は29.3万円で、訪日客全体の約1.4倍。地方訪問率93.2%、平均滞在13.9日
  • スノーリゾートを訪れる訪日外国人の約74%はアジアから
  • 台湾客は台湾の連休で動く。2027年は元旦3連休(1/1〜3)と春節7連休(2/4〜10)
  • 装備を持たない客、滑らない同行者、着いてからの移動。この3つを先に書き出す
  • FITはプレ旅マエから。ウェブ広告・SNS・繁体字LPの3点で、行き先が決まる前に候補へ入る

参考:台湾インバウンド戦略カレンダー 2027年版/台湾の展示会カレンダー2027/観光施設の台湾インバウンド

よくある質問

台湾の人は、スキーやスノーボードをしたことがあるのですか。
台湾には天然の雪が積もるスキー場がありません。台北の年平均気温はおよそ23度で、平地で雪が降ることはまずありません。そのため日本の雪山に来る台湾客は、初めて雪に触れる人や、数えるほどしか滑ったことがない人が中心になります。滑ること自体より「雪を見る・雪で遊ぶ」ことが目的の人も多くいます。
台湾からの冬シーズンの訪日客は、いつ頃来ますか。
台湾の連休に集中します。2027年は元旦が1月1日から3日までの3連休、春節(旧正月)が2月4日から10日までの7連休です。日本の年末年始やスキーシーズンの感覚とはずれるので、台湾側の休日で考える必要があります。航空券は3〜4か月前に埋まり始めます。
台湾向けの情報は、繁体字で用意する必要がありますか。
必要です。台湾で使われるのは繁体字で、中国大陸の簡体字とは字が違います。簡体字のままの案内は、台湾の人には「自分たち向けではない」と伝わります。リフト券の種類、レンタルの有無とサイズ、子ども向けの区画といった、現地で判断に使う情報から繁体字にする価値があります。
国の補助事業では、どんなことが対象になりますか。
観光庁の「国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業」では、スキー場インフラの整備のほか、受入環境整備(多言語対応、Wi-Fi整備、キャッシュレス、DX対応等)、外国人対応が可能なインストラクターの確保、二次交通の確保、情報発信(プロモーション素材の作成等)が事業内容に挙げられています。補助率は2分の1で、補助の対象者はDMOや民間事業者等です。申請や要件は年度ごとに変わるため、観光庁の公募要領で確認してください。