台湾向けの観光プロモーションを外部に委託するとき、仕様書に何をどこまで書くかで、集まる提案も、受託者の動き方も変わります。ところが、よその自治体がどう書いているかを確かめようとすると、公告は年度が終わると閲覧できなくなります。
公募型プロポーザルの公告39件を集めて、金額ではなく中身を抜き出しました。委託費の相場をまとめた記事の続きにあたります。
13件
成果指標を数値で書いていた発注者(39件中)
22件
報告が業務完了時だけ(記載を確認できた33件中)
1件
前払いを認めていた公告
成果指標を数値で書いている発注者は、3分の1
単位:件 成果指標の記載を確認できた33件。残る6件は仕様書に到達できなかったもの
数値を書いている発注者は、何を測るかまで指定しています。
- 長野県(令和6年度 台湾現地観光プロモーション業務)は「③ 商談件数 :100 件」「④ 商品造成件数 :10 本」「⑤ メディア掲載件数 :3本」「⑥ 参加者満足度 :80%」
- 栃木県(令和8年度)はエンゲージメントの「目標値は、2,400,000回以上(うち、米国分1,200,000回以上)」、OTAの予約ページへのクリックは「各市場4,100回以上」
- 宮城県(令和6年度 台湾サポートデスク業務)は訪問を「延べ40社以上(月4社以上)」、商品造成を「10商品以上」
- 大分県(令和8年度 戦略パートナー業務)は「セールスコールは、毎月4社以上、かつ、年間50回以上実施すること。」
- 甲府市(令和8年度 ファムツアー業務)は「被招聘者による 2 本以上のツアー造成すること。」
一方、受託者に設定させる書き方も同じだけあります。さっぽろ連携中枢都市圏観光協議会は「当該事業の有効性を測る事業指標及び成果指標を設定し示すこと。」、流山市は「KPIについては契約時に委託者と協議して設定することとし」と書いています。
報告を求める頻度は、案件で大きく違います
単位:件 報告義務の記載を確認できた33件
もっとも多いのは、業務完了時に報告書を出して終わる形です。対して、年間を通して動く業務には重い報告が付きます。
- 大分県は「月に一度、月次ミーティングを行い」「ミーティングは日本語で実施すること。」に加え、「毎月7日(土日祝日の場合は直後の平日)までに、前月の活動内容をまとめた月次報告書を提出することとし」と定めています
- 宮城県は「毎月の活動状況について、翌月の10日までに」の定期活動報告に加えて、「商品の造成状況について、四半期毎に報告をすること。」
- 海の京都DMOは「毎月の活動状況及び収集した情報及び委託者が求める情報等を、海の京都 DMO に提出すること。」
- 長野県は報告ではなく打合せの頻度を指定していて、「打合せは、必要に応じて週1回以上(オンラインでも可)実施、渡航前1週間は2回以上対面での実施を想定すること。」
ここは積算に直結します。月次ミーティングと月次報告書がある業務と、完了時に報告書を1冊提出する業務では、同じ委託料でも受託者側の人件費が変わります。報告の頻度を上げるほど、受託者が実務に充てられる時間は減ります。
台湾に拠点を求める公告は6件
単位:件 記載を確認できた34件。複数に当てはまる場合は、もっとも強い要件で数えた
拠点そのものを求めているのは6件です。書き方は具体的です。
残りの多くは、拠点ではなく人の配置を求めています。さっぽろ連携中枢都市圏観光協議会は旅行博の運営について「日本語と中国語が流暢に話せる通訳スタッフを常時5名以上配置すること。」、東北観光推進機構は「中国語及び日本語での会話ができ、アンケート調査及び東北の観光説明を行う能力がある者を3名程度配置」と書いています。
逆向きの条件もあります。名古屋観光コンベンションビューローは「(4) 名古屋市内に、本店、支店又は営業所等を有する事業者であること。」と、日本側の所在地を求めています。
委託料の支払いは、ほとんどが完了後です
支払い条件の書き方は、受託者の資金繰りを左右します。確認できた範囲では、前払いを認めていたのは長野県の1件だけでした(契約書案で委託料の10分の3まで)。
- 大分県「原則として事業完了後…の精算払いとし」「なお、前払金の請求は認めない。」
- 海の京都DMO「(5)委託経費の支払条件 契約代金の支払については、委託期間終了後に行う。」
- 埼玉県「支払先銀行口座は日本国内に本店・在日支店を置く銀行口座とする。」
- 三重県「支払先も日本国内の銀行等の口座に限る。」
- 愛媛県「委託料は日本円で支払うこととし、支払先を海外の銀行に指定する場合は、海外送金手数料を受託者の負担とする」
税の書き方で、海外の事業者を想定している発注者も2件ありました。北九州市と大分県は、予算上限額に「※国内事業者:消費税及び地方消費税相当額を含む」「※海外事業者:所在する国または地域で支払いが必要な税を含む」と二つの注記を付けています。
現地の体制を求めながら、支払いは国内口座に限る。この2つが同じ公告に入っていると、台湾側の会社は日本法人か共同企業体を立てないと応募できません。どちらの条件にも理由があるものですが、両方を並べたときに誰が応募できるのかは、公告を出す前に一度ご確認いただくと確実です。
どの事業者が受託しているか
単位:件 提案者数を公表していた14件の分布
応募の状況は案件で大きく違います。公告では、応募した事業者の数を「者」と数えます。個人事業主や共同企業体も応募できるためです。もっとも多かったのは北九州市の12者(受託は株式会社JTB北九州支店)、次が松山国際観光客誘致推進協議会の11者(受託は株式会社デイリー・インフォメーション関西)。一方で、1者だけの応募で選定に至った案件も5件ありました。
受託者の顔ぶれは、大手旅行会社と放送局、広告会社が中心です。JTB、エイチ・アイ・エス、近畿日本ツーリスト、JTBコミュニケーションデザイン、ジェイアール東日本企画、テレビ愛媛、新潟放送。そこに、台湾に本社を置く広告会社が混じります。
契約額が上限に近づく傾向も変わりません。松山国際観光客誘致推進協議会の案件は提案限度価格4,000,000円に対して契約3,982,000円、神奈川県協議会のITF2026出展業務は上限3,083,300円に対して見積3,082,646円でした。
仕様書に書いておくと、受託者が動きやすくなること
39件を読み比べて、記載の有無で提案のそろい方が変わると感じた項目を挙げます。
何を測るかだけでも決めておく
数値目標までは置けなくても、「送客人数」「商品造成数」「リーチ数」のどれを見るのかを決めておくと、提案が横に並びます。北九州市は「造成数や販売数に関するKPIを示すこと。」と対象だけを指定しています。
報告の頻度と形式を先に書く
月次か完了時か、書面か会議か、言語はどちらか。記載がないと、見積りに乗る工数が提案ごとにばらつきます。大分県は「月次ミーティングには、原則として現地の営業拠点で活動する者も出席すること。」まで指定しています。
現地に求めるのは拠点か、人かを分ける
「台湾に拠点」と書くと、応募できる事業者は大きく絞られます。求めているのが現地での日常的な営業なのか、会期中の通訳なのかで、書き方は変わります。大分県のように「連携企業が拠点を有する場合も可」と添える方法もあります。
支払いと口座の条件を、資格要件と突き合わせる
現地拠点を求めながら国内口座に限ると、応募できる相手が限られます。愛媛県のように海外送金の扱いを書いておくと、現地法人も見積りを作れます。
39件の一覧
委託料の上限額、成果指標の決め方、受託者をまとめました。報告の頻度、拠点要件、再委託、支払い、一次資料のURL、資料が現存するかどうかは、下のCSVに入っています。
| 発注者 | 業務名 | 年度 | 委託料上限 | 成果指標 | 受託者 |
|---|---|---|---|---|---|
| さっぽろ連携中枢都市圏観光協議会 | 台湾市場誘客促進 | 令和7年度 | 13,050,000円 | 受託者が設定 | 株式会社ノース・スター・トラベル |
| さっぽろ連携中枢都市圏観光協議会 | 台湾市場誘客促進 | 令和8年度 | 12,500,000円 | 受託者が設定 | 株式会社ノース・スター・トラベル |
| 宮城県 | 台湾サポートデスク | 令和6年度 | 6,000,000円 | 発注者が数値 | — |
| 一般社団法人東北観光推進機構 | 台湾KTF2026(高雄)を活用した東北プロモーション事業 | 2026年 | 3,200,000円 | 受託者が設定 | 株式会社office PLAN B |
| 一般社団法人東北観光推進機構 | 台湾における東北プロモーション事業(台湾KTF2026 高雄) | 2026年 | 未確認 | — | 近畿日本ツーリスト株式会社 仙台支店 |
| 一般社団法人東北観光推進機構 | 台湾における東北プロモーション事業(日本東北遊楽日) | 2026年 | 未確認 | — | 株式会社JTBコミュニケーションデザイン |
| 一般社団法人東北観光推進機構 | 台湾における東北プロモーション事業 | 2025年 | 未確認 | — | 株式会社ジェイアール東日本企画 |
| 福島県デスティネーションキャンペーン実行委員会 | 海外インフルエンサーDC発信事業(台湾・米国・豪州) | 令和7〜8年度 | 31,218,000円 | 数値目標なし | — |
| 福島県・山形県・新潟インバウンド推進協議会 | 三県連携による台湾プロモーション事業 | 令和8年度 | 4,500,000円 | 受託者が設定 | 株式会社新潟放送 |
| 鏡石町 | 台湾インバウンドに向けた鏡石町魅力発信事業 | 令和8年度 | 10,000,000円 | 数値目標なし | — |
| 鏡石町 | 台湾インバウンドに向けた鏡石町魅力発信事業 | 令和7年度 | 14,000,000円 | 数値目標なし | — |
| 埼玉県外国人観光客誘致推進協議会 | 台湾市場向けプロモーション事業 | 令和7年度 | 3,100,000円 | 受託者が設定 | — |
| 埼玉県外国人観光客誘致推進協議会 | 台湾市場向けプロモーション事業 | 令和8年度 | 3,150,000円 | 受託者が設定 | — |
| 栃木県国際観光推進協議会 | とちぎ観光デジタルマーケティング・インバウンド誘客促進事業(台湾・タイ・米国) | 令和8年度 | 21,060,000円 | 発注者が数値 | — |
| 栃木県国際観光推進協議会 | とちぎ観光デジタルマーケティング・インバウンド誘客促進事業(台湾・タイ・米国) | 令和7年度 | 18,500,000円 | — | 株式会社オールアバウト |
| 長野県 | 台湾現地観光プロモーション | 令和6年度 | 3,178,000円 | 発注者が数値 | 株式会社JTBコミュニケーションデザイン |
| 甲府市 | 県央ネットやまなし観光エリア ファムツアー(台湾市場) | 令和8年度 | 4,540,000円 | 発注者が数値 | 株式会社羅針盤 |
| 静岡市 | 台湾向け旅行系アプリを活用した誘客促進 | 令和7年度 | 5,000,000円 | 発注者が数値 | 株式会社アール・プランニング |
| 静岡市 | 旅行予約サイト等を活用したツアープランコンテスト実施(台湾等) | 令和8年度 | 5,000,000円 | 発注者が数値 | 株式会社アール・プランニング |
| 富士箱根伊豆国際観光テーマ地区神奈川県協議会 | 2026台湾国際旅行博(ITF2026)における観光プロモーション | 令和8年度 | 3,083,300円 | 発注者が数値 | 株式会社エヌケービー |
| 流山市 | 流山市外国人観光客誘致プロモーション | 令和8年度 | 3,058,000円 | 契約時に協議 | 株式会社NEXTOUR |
| 海外観光客誘客推進協議会(富山県・岐阜県ほか) | 中部山岳地域における台湾メディア・インフルエンサー招聘事業 | 令和8年度 | 3,500,000円 | 受託者が設定 | — |
| 石川県(福井県と連携) | 訪日WEBメディアを活用した観光プロモーション事業(台湾) | 令和6年度 | 3,000,000円 | 発注者が数値 | — |
| 石川県 | 石川県台湾誘客現地PR事業(レップオフィス設置) | 令和8年度 | 3,500,000円 | 発注者が数値 | — |
| 三重県 | 台湾現地における観光・食・物産が一体となった誘客プロモーション | 令和7年度 | 12,081,850円 | 受託者が設定 | — |
| 公益社団法人三重県観光連盟 | 台湾現地における観光・食・物産が一体となった誘客プロモーション | 令和8年度 | 11,838,934円 | 受託者が設定 | — |
| 三重県 | 台湾教育旅行誘致・受入調整 | 令和8年度 | 4,522,980円 | 数値目標なし | — |
| 公益財団法人名古屋観光コンベンションビューロー | 台湾ランタンフェスティバル出展事業 | 令和8年度 | 3,770,000円 | 数値目標なし | — |
| 一般社団法人京都府北部地域連携都市圏振興社(海の京都DMO) | 海の京都DMO台湾観光レップ | 令和7年度 | 2,200,000円 | 数値目標なし | — |
| 米子市 | 台湾への観光情報発信 | 令和7年度 | 1,500,000円 | 受託者が設定 | — |
| 一般社団法人ツーリズムKURE | 海外メディア等を活用した台湾市場向け観光情報発信 | 令和8年度 | 1,500,000円 | 受託者が設定 | 株式会社NEXTOUR |
| 松山国際観光客誘致推進協議会 | 台湾市場におけるインフルエンサーを活用した誘客プロモーション | 令和8年度 | 4,000,000円 | 受託者が設定 | 株式会社デイリー・インフォメーション関西 |
| 松山市 | 台湾交流促進事業 | 令和4年度 | 24,000,000円 | — | 株式会社テレビ愛媛 |
| 松山空港利用促進協議会(愛媛県) | 台湾における愛媛県観光PR等 | 2026年度 | 8,360,000円 | 数値目標なし | 台湾に本社を置く広告会社 |
| 北九州市国際観光推進協議会 | 台湾市場における誘客プロモーション(第1回) | 令和8年度 | 8,000,000円 | 発注者が数値 | 株式会社JTB北九州支店 |
| 北九州市・山口県(連携都市) | 台湾市場における誘客プロモーション(第2回) | 令和8年度 | 4,000,000円 | 発注者が数値 | 株式会社エイチ・アイ・エス 小倉本店 |
| 熊本県 | 台湾における熊本の認知度向上・イメージアッププロモーション | 令和8年度 | 17,000,000円 | — | — |
| 大分県・公益社団法人ツーリズムおおいた | 台湾市場誘客促進のための戦略パートナー事業 | 令和8年度 | 18,000,000円 | 発注者が数値 | — |
| 宮崎県 | OTAと連携した韓国・台湾・香港・ASEAN向けデジタルプロモーション事業 | 令和7年度 | 32,000,000円 | 発注者が数値 | — |
「公告は、年度が終わると公開が終了します。」この39件のうち相当数が、すでに発注者のページでは閲覧できません。前年度の仕様書を参考にしたいご担当者に向けて、原文の該当箇所を引用したうえで一覧にしています。公告が消える問題そのものは、委託費を集計した記事で扱いました。
引用のしかた
出典を書いていただければ、表もCSVも自由にお使いいただけます(CC BY 4.0)。
出典:カケハシ「自治体の台湾プロモーション、仕様書は何を求めているか|公告39件を読み比べた」https://tjmw.com.tw/taiwan-promotion-specs/
更新履歴
- 2026年10月20日:公開(公告39件・2024年10月〜2026年10月の公告が対象)
ご相談
カケハシは台北にオフィスを置いて14年、自治体・DMOの台湾向け業務を受託しています。仕様書に書く条件や、積算で使う現地の単価について、公開していない範囲も含めてお話しできます。これから公告を出す前の段階でも構いません。お問い合わせからご連絡ください。
よくある質問
- 自治体の台湾プロモーションの仕様書には、成果指標(KPI)が書かれていますか。
- 公告39件のうち、発注者が数値目標まで書いていたのは13件です。受託者に設定させるものが13件、数値目標を置かないものが7件、記載を確認できなかったものが6件でした。数値を書いている例では、長野県が「商談件数:100件」「商品造成件数:10本」、栃木県がエンゲージメント「2,400,000回以上」、宮城県が「旅行会社による新規商品造成数」「10商品以上」と指定しています。
- 受託者はどのくらいの頻度で報告を求められますか。
- 記載を確認できた33件のうち22件は、業務完了時の報告だけです。月次の報告を求めるのは4件(宮城県、海の京都DMO、愛媛県、大分県)、四半期が2件、週1回以上の打合せを求めるものが1件あります。大分県は月次ミーティングと月次報告書の両方を求め、ミーティングは日本語で実施すると定めています。
- 台湾に拠点がないと応募できませんか。
- 拠点を要件にしている公告は39件中6件です。多くは拠点ではなく、通訳や中国語対応ができる人員の配置を求めています。福島県が公表した質問回答は「台湾に本社を有する事業者など、海外法人であっても、本募集要領に定める参加要件を満たす場合は、本プロポーザルに参加し、契約を締結することが可能です」と明記しています。実際に、愛媛県の2026年度の業務では、台湾に本社を置く広告会社が委託候補になっています。
- 委託料は前払いしてもらえますか。
- 前払いを認めていたのは、確認できた範囲で長野県の1件だけです(契約書案で委託料の10分の3まで)。大分県は「前払金の請求は認めない」と明記し、海の京都DMOは「契約代金の支払については、委託期間終了後に行う」としています。埼玉県・三重県・北九州市は支払先を日本国内の口座に限っており、愛媛県は海外の銀行を指定する場合の送金手数料を受託者負担としています。





