この記事は約14分で読めます。
目次
はじめに
台湾と日本の間では長年にわたって深い文化交流が続いており、近年ではそのつながりがさらに強まっています。特に日本の文化や商品に対する注目が再び高まりを見せており、台湾の若者を中心に日本への関心が一層広がってきました。アニメ、映画、ドラマなどのエンターテインメント分野は、その中でも大きな影響力を持っており、話題となる作品や人気俳優の登場によって、日本の最新カルチャーがリアルタイムで台湾に広がっています。
日本で話題になった作品が、SNSや動画配信サービスを通じて瞬く間に台湾でも人気となるケースも多く、今や国境を越えたカルチャーの共有が当たり前の時代となりました。また、アニメの聖地巡礼や、映画・ドラマのロケ地を訪れる“聖地観光”も注目を集めており、日本旅行の目的がより多様化している点も見逃せません。
この記事では台湾で現在話題となっている日本関連のトレンドを詳しく解説します。
1. 日本の映画やドラマの人気急上昇
台湾では日本のドラマや映画が再びブームになっています。特に藤井道人監督の最新映画「青春18×2」が話題となっており、台湾人にも高い評価を受けています。藤井道人監督は「新聞記者」などの作品で知られ、台湾でもそのリアルなストーリー展開と繊細な表現が人気を呼んでいます。
他にもNetflixの「First Love 初恋」(満島ひかり、佐藤健主演)は台湾で絶大な人気を誇り、SNSでも頻繁に話題となっています。また、「silent」(川口春奈、目黒蓮出演)など感情豊かなドラマが注目を浴びています。
台湾において「緯來日本」や「國興衛視」といったケーブルテレビの日本専門チャンネルは、長年にわたり多くの視聴者に支持され、非常に重宝されています。これらのチャンネルは、日本の最新ドラマやアニメ、バラエティ番組、映画、さらには音楽番組やドキュメンタリーなど、幅広いジャンルのコンテンツを放送しており、日本のメディア文化を台湾の一般家庭に届ける重要なメディアとして機能しています。
特に、台湾では日本のサブカルチャーや芸能文化への関心が高く、これらの番組を通じて日本語のリスニング練習をする視聴者や、日本の俳優・アイドルに親しみを持つファンも多く存在します。
台湾では、動画配信サービスの利用も広がっています。特にNetflixやディズニープラス、KKTVなどが多くの人々に支持されています。Netflixでは日本の最新ドラマやアニメがいち早く配信されることが多く、日本文化に関心のある若者を中心に高い人気を誇っています。ディズニープラスもジブリ作品や日本のアニメシリーズを取り扱っており、安定した支持を集めています。また、KKTVは日本のドラマやアニメのラインナップが充実しており、日本コンテンツを楽しむために利用する人が多いです。これらのサービスを通じて、台湾の人々は手軽に日本の最新コンテンツに触れることができ、日本ブームをさらに後押ししています。
台湾で人気の日本ドラマ:
・孤独のグルメ:実在する店で撮影されており、視聴者がそのまま“聖地巡礼”できるのも人気の理由。台湾の店舗では、ドラマにちなんだ「五郎特餐」という特別セットが提供され、ファンの間で話題となっています。最近主役の松重豊さんが映画のPRのため訪台し、話題となっていました。
・不適切にも程がある
・ドクターX
関連の記事はこちら
2. アニメ作品の大ヒット
日本のアニメは長年にわたって台湾の若者を中心に強い影響力を持ち続けており、その人気は衰えるどころか、ますます拡大しています。台湾では小学生から大学生、さらには社会人まで、幅広い世代の人々が日本のアニメを日常的に視聴しており、その文化はすでに生活の一部となっています。特に近年では、「SPY×FAMILY(スパイファミリー)」や「チェンソーマン」、「鬼滅の刃」、「ちいかわ」といった作品が台湾でも爆発的な人気を博しており、アニメファンの間では話題が尽きません。
中でも「SPY×FAMILY」の人気は非常に高く、特にキャラクターの「アーニャ・フォージャー」は台湾のSNS上で頻繁に取り上げられています。彼女の表情豊かでユニークなリアクションは、ミームやスタンプなどの形で広まり、多くの若者が日常会話の中でもアーニャの表情を引用するほどです。台湾各地で開催されるアニメイベントや同人誌即売会では、アーニャのコスプレをする参加者や、彼女をモチーフにしたグッズを販売するブースが目立ち、まさに「アーニャ旋風」が吹き荒れていると言っても過言ではありません。
また、「鬼滅の刃」は映画の公開時に台湾の映画館でも大ヒットを記録し、台湾の興行収入ランキングで上位に食い込むなど、日本と同様の盛り上がりを見せました。「チェンソーマン」もその斬新なストーリーとスタイリッシュな映像美で若者の心をつかみ、アニメ放送時にはSNSでのリアルタイムな反応が活発に投稿されるなど、視聴者の熱量の高さがうかがえます。
台湾では、日本発のキャラクター「ちいかわ(吉伊卡哇)」が非常に高い人気を誇っています。その人気ぶりはさまざまな形で表れており、2025年初めに高雄で開催された「Kaohsiung Wonderland 冬日遊楽園」では、ちいかわの巨大バルーンが登場し、多くの人が来場し大盛況となりました。
また、台湾のファミリーマートではちいかわとのコラボ商品が展開され、ドリンクチェーン「WooTea(五桐茶)」とのタイアップではオリジナルグッズが配布されるなど、企業とのコラボも活発に行われています。さらに、台湾限定デザインの交通系ICカード「悠遊カード(EasyCard)」も登場し、ファンの間で話題となりました。
このように、日本のアニメは台湾の若者文化の中に深く根付いており、単なる娯楽にとどまらず、言語学習、ファッション、創作活動など多方面にわたる影響を及ぼしています。アニメをきっかけに日本語を学び始める若者も多く、アニメ文化が日台の文化交流を促進する重要な要素となっていることは間違いありません。
ちいかわ関連の記事はこちら
‐「ちいかわ寿司」が華山でポップアップ 台北MRTでラッピング列車も
3. 日本の俳優・女優への注目
台湾では日本の俳優や女優への関心が年々高まっており、その人気はテレビドラマや映画、さらにはSNSを通じて広がりを見せています。特に山﨑賢人、新田真剣佑、吉沢亮、浜辺美波、橋本環奈といった若手の人気俳優・女優たちは、台湾でも幅広いファン層を獲得しています。彼らが出演する作品は、放送されるたびに高視聴率を記録するほか、微博(Weibo)やInstagram、X(旧Twitter)などのSNSでも頻繁に話題となり、トレンド入りすることも珍しくありません。
例えば、山﨑賢人が主演を務める大ヒット映画『キングダム』シリーズは、壮大なスケールと迫力あるアクション、魅力的なキャラクターが台湾の観客にも強く支持され、劇場公開時には多くのファンが詰めかけました。
こうした日本の俳優・女優たちは、単なる「演技力」だけでなく、スタイルやファッション、バラエティ番組での自然なトークなど、多面的な魅力によって台湾の若者を中心に支持を集めており、日台間の文化交流にも大きな役割を果たしています。
4. 日本のカルチャーカフェと洋食のブーム
近年、台湾の都市部では日本の洋食文化やカフェカルチャーをテーマにした店舗が急速に増加しています。特に台北や台中、高雄といった大都市では、昭和レトロの雰囲気を再現したカフェや喫茶店が若者を中心に高い人気を集めています。店内には木製の家具やアンティーク調のインテリア、昭和期のポスターやレコードなどが飾られ、日本の昔懐かしい雰囲気が漂っています。
提供されるメニューも、昭和の日本を感じさせるものばかりです。ケチャップの香ばしさが特徴のナポリタン、ふわふわのパンにやさしい味の卵サラダを挟んだ卵サンド、そして見た目も華やかなプリンアラモードなど、どれも懐かしさと新しさを兼ね備えた一品です。台湾の若者にとっては新鮮で可愛らしい“レトロ文化”として受け入れられており、日本の昭和時代の空気感が異国の地で新たな魅力を放っています。
こうした昭和レトロブームは、SNS映えするビジュアルや、日本文化への親近感、そしてコロナ禍を経たノスタルジーへの関心の高まりなど、さまざまな要因が複合的に影響していると考えられます。今後も、台湾における日本の喫茶文化の浸透と進化に注目が集まりそうです。
また、「LaLaport」が台湾で2軒目の店舗をオープン。日本でおなじみのショッピングモールが、台湾でもどんどん定着してきています。「DON DON DONKI(ドン・キホーテの海外版)」も勢いよく店舗を拡大中。日本の食材やお菓子、生活雑貨などが手軽に手に入るだけでなく、店内のポップや雰囲気も日本そのままで、日本好きの台湾人だけでなく、現地在住の日本人にも人気です。
5. 日本旅行と地方創生の関係
近年、アニメやドラマのロケ地を巡る「聖地巡礼」も台湾人旅行者の間で大きなトレンドとなっています。特に『鬼滅の刃』の舞台モデルとされる福岡県の竈門神社や、『First Love 初恋』で登場した北海道・札幌のロケ地を訪れる旅行者が増えています。こうした聖地巡礼は地域経済にも貢献し、地方創生を後押しする要素となっています。
台湾人の間では日本旅行への関心が高く、特に地方都市やローカル体験が人気です。京都府北部の美山町など、地方創生の一環として取り組まれている地域の農泊や体験型観光も台湾人に人気を博しています。桜や紅葉の季節の訪日も依然として高い需要があります。
2024年公開の劇場版『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』をきっかけに、五稜郭が再び注目を集めています。函館にある星形の「五稜郭」は、これまでにも観光地として人気でしたが、コナン映画の舞台として登場したことで、一気に“聖地”としての存在感を増しました。
6.日本のファッションカルチャーへの注目
台湾では日本のファッションカルチャーも人気が厚いです。単なるトレンドや外見的な魅力にとどまらず、文化的な共感、実用性、そしてライフスタイルへの親近感が深く関係しているからです。日本のファッションは台湾に人々にとっておしゃれだけではなく、自分らしさを表現できるツールとして受けいられています。
台湾に店舗を持っている日本のブランド
・BEAMS:ビームスはただの洋服ブランドではなく、「ライフスタイルショップ」としての立ち位置が特徴です。ファッションだけでなく、雑貨、音楽、家具、アート、文具など、トータルで“おしゃれな生活”を提案しています。台湾でも近年、「ファッション=自己表現」「生活=センスの延長」と考える若者が増えており、ビームスの“暮らしまで含めたスタイル提案”に大きく共感が集まっています。
・COEN:「coen(コーエン)」は手頃な価格・親しみやすいデザイン・日本らしい“ちょうどいいおしゃれ感”が、台湾の若者たちにフィットしているため台湾でも人気。
・URBAN RESEARCH:台湾でも“日本らしい上品さ”が評価され、落ち着いたファッションを好む層に人気。
台湾で、日本のファッションが好きな人たちの間では、日本の古着も人気を博しています。リユースショップブランド「2nd STREET」はここ数年で台湾での店舗数を40店舗以上に拡大しています。日本の古着需要がうかがえます。
関連記事はこちら
‐リユースショップ「2nd STREET TAIWAN」 台北東区エリアに初の路面店
まとめ
台湾における最近の日本ブームは、多彩なジャンルで展開されています。映画『青春18×2』のような新作映画や、人気ドラマ『First Love 初恋』など、具体的な作品や人物が話題を呼び、台湾人の訪日意欲をさらに高めています。SNSや動画配信サービスを通じて、台湾と日本の文化的距離はますます縮まっており、台湾人の訪日意欲は以前にも増して高まっています。このようなトレンドを的確に把握し、観光やマーケティングにおいて効果的に活用することができれば、訪日観光客のさらなる増加や、日台間の交流の活性化にもつながるでしょう。