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目次
台湾の若者 vs. シニア層、日本旅行の楽しみ方の違いとは?
1. はじめに
台湾から日本への観光客は年々増え続けており、2023年には約491万人が訪日しました(日本政府観光局・JNTO調べ)。特にリピーター率は約70%を超え、日本旅行は台湾人にとって日常的な楽しみの一つとなっています。
しかし、世代によって旅行スタイルや重視するポイントには大きな違いがあります。若者はSNS映えを重視し、シニア層はリラックスや高級志向の旅を好む傾向があります。台湾人のリアルな声や筆者の体験を交えながら、台湾の20〜30代の若者層と60代前後のシニア層がどのように日本旅行を楽しんでいるのか、その違いを詳しく解説します。。
2.台湾の若者(20〜30代)の日本旅行スタイル
台湾の若い世代では、幼少期に親に連れられて日本旅行に行ったことのあるという人が多くを占めます。大学生になると長期休暇のタイミングや卒業旅行として、同級生と日本旅行を計画するというケースも少なくありません。
(1) SNS映えスポット巡りが中心
台湾の若者にとって日本旅行は「インスタグラムやTikTokにアップする映える写真・動画を撮る」絶好の機会です。東京や大阪、京都などの都市部にあるトレンドスポットを巡ることが目的の一つになっています。
人気のスポット例:実際に台湾の友人も、伏見稲荷大社の千本鳥居を背景に写真を撮っていて「超インスタ映え!」と興奮してたことが印象深かったです。
(2) アニメ・ゲーム・K-POPの影響が大きい
日本のアニメやゲーム文化に強く影響を受けた台湾の若者は、秋葉原や池袋、大阪・日本橋といった、いわゆる“オタク文化”が根付いたエリアを訪れることが多くあります。これらのエリアでは、アニメ・マンガのグッズショップやコスプレ体験、カフェ、限定イベントなどが充実しており、まるで“聖地巡礼”のように楽しんでいる姿が見られます。特に秋葉原では、最新のフィギュアやガチャガチャ、推しキャラの等身大パネルと写真を撮るなど、“推し活”を日本で体感するのがひとつの目的になっている人も少なくありません。
また、近年はK-POPや韓国ドラマの影響で、韓国文化への関心が高まっており、韓国系ショップや飲食店が並ぶ大阪・鶴橋エリアにも若者が多く集まるようになっています。K-POPアイドルグッズを探したり、チーズハットグや韓国風スイーツを楽しんだりと、「韓国文化×日本旅行」のハイブリッドな楽しみ方も出現しています。
このように、台湾の若者にとって日本旅行は単なる観光ではなく、“推し”や“好き”を深く体験しに行く、感情のこもったアクティブな旅となっているのも特徴です。
秋葉原(東京):アニメ・ゲームショップ巡り、メイドカフェ
池袋(東京):乙女ロード、アニメショップ
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(大阪):ハリーポッターエリア、ニンテンドーワールド
(3) 食べ歩きが好き!グルメよりも手軽さ重視
若い世代は、消費能力が限られるため、高級レストランよりも、屋台やB級グルメなど「手軽さ×インスタ映え」を重視する傾向があります。旅先での食事は“お腹を満たす”だけでなく、“写真や動画をシェアする楽しみ”として捉えられており、見た目の可愛さや色鮮やかさ、ユニークさがあるメニューが好まれます。
原宿のクレープや、浅草のハート型のたい焼き、道頓堀のたこ焼きなどは、台湾のSNSでもよく見かける定番映えグルメです。食べ歩きしながら動画を撮る、屋台の看板と一緒に写真を撮るなど、「その場の雰囲気ごと切り取る」ような体験が人気を集めています。
また、台湾の夜市での食べ歩き文化が根強いためか、日本旅行中でも気軽にテイクアウトできるグルメに対してチャレンジのハードルが低く、「その国ならではのローカル感」を魅力に感じとっているようです。食事にかける時間やお金よりも、“シェアしたくなるグルメ体験”を求めている点は、台湾の若者の特徴と言えるでしょう。
人気の食べ歩きグルメ:
- たこ焼き(大阪)
- たい焼き・クレープ(東京・原宿)
- 焼き鳥(居酒屋巡り)
(4) 宿泊はコスパ重視!ドミトリーやゲストハウスが人気
カプセルホテルやゲストハウス、Airbnbなど、リーズナブルで必要最低限の設備が整った宿泊先を選び、「ホテルにお金をかけるより、体験に投資する」スタイルが主流です。
台湾の若者には「寝るだけだから、宿は安くて十分」との考えを持つ人もおり、浮いたお金をテーマパークやショッピング、カフェ巡りなど”活動時の体験”に使うという考えが一般的です。さらに、SNSで宿泊先のレビューや内装写真をチェックして、“おしゃれだけど安い”場所を選ぶリサーチ力も高く、「ホステルでも雰囲気が良ければOK」という柔軟な考え方が見られます。
また、グループで旅行する際にはAirbnbを活用して「友達と一緒にキッチン付きの部屋を借りて、自炊しながら旅行を楽しむ」など、日本滞在を生活の延長として楽しむようなスタイルも人気です。このように、台湾の若者は価格だけでなく、“体験重視×共有重視”の視点で宿泊施設を選んでいるのが特徴です。
人気の宿泊スタイル:
- カプセルホテル(東京・大阪)
- ゲストハウス・ホステル
- Airbnb(大人数で利用)
3. 台湾のシニア層(60代前後)の日本旅行スタイル
シニア層になるとリピーターの比率が大きく上がります。旅行形態としては、家族や友人と一緒に旅行するというパターンが多いでしょう。成人して社会に出た子どもに、旅行へ連れてきてもらうというケースもあります。
(1) 落ち着いた観光スポットを好む
台湾のシニア層は、若者と比べて歴史的な場所や自然豊かなエリアを訪れることを好みます。賑やかな都市観光よりも、落ち着いた雰囲気のなかで季節を感じたり、日本ならではの文化に触れることに魅力を感じるようです。また、歩き回って観光名所を巡るというよりは、一つひとつの場所でゆっくり時間を過ごす“深い旅”を楽しむ傾向があります。
たとえば京都の寺社巡りでは、境内で静かにお茶を飲んだり、苔庭を眺めながらのんびり過ごすといった過ごし方が好まれます。実際に台湾のシニア世代の話を聞いても、「何度も行っているけど、やっぱり京都は落ち着く」「紅葉の時期にまた行きたい」といった声が多く、日本の“美しい四季”や“和の風情”を味わうことが、日本旅行の醍醐味として受け入れられていることがわかります。こうしたシニア層の旅は、若者のようにスポットを詰め込む旅ではなく、“余白のあるスケジュール”を楽しむのが特徴です。
人気のスポット例:
- 京都:金閣寺、清水寺、南禅寺
- 箱根:温泉旅館、芦ノ湖クルーズ
- 北海道:富良野・美瑛の風景、美味しい海鮮
(2) 温泉・高級旅館でのんびり
シニア層にとって、日本旅行の最大の魅力の一つが「温泉体験」です。日常の喧騒から離れて心身を癒せる空間として、温泉地は特に人気があります。なかでも、落ち着いた雰囲気の高級旅館や、部屋に露天風呂が付いた宿など、静かに過ごせる丁寧なもてなしを感じられる”場所が好まれる傾向があります。台湾にも温泉地はありますが、日本の高級温泉旅館の内装や、四季を感じる庭園などがやはり人気です。
館内で浴衣に着替えてゆっくりと湯に浸かる、日本茶を飲みながら縁側でくつろぐなど、まるで“日本の暮らしを体験するような滞在が、台湾のシニア層には非常に魅力的に映るようです。さらに、台湾ではあまり馴染みのない「懐石料理付きの宿」も人気ポイントのひとつ。夕食を部屋でゆっくり味わえることや、スタッフの丁寧な接客に感動する人も多く、「日本の“おもてなし文化”を最も強く感じたのが温泉宿だった」と話す方もいました。このように、日本の温泉宿は、ただお風呂に入る場所ではなく、非日常を丸ごと体験できる特別な空間として、台湾のシニア層に深く支持されています。
- 草津温泉(群馬)
- 別府温泉(大分)
- 城崎温泉(兵庫)
(3) グルメは「質」を重視!和食・会席料理が人気
若者と違い、シニア層は「手軽さ」よりも「質の高い食事」を求める傾向があります。食事は旅の中でも特に大切にされており、単なる“お腹を満たすもの”ではなく、“日本の伝統や土地の魅力を味わう時間”として楽しまれています。寿司や懐石料理、旬の食材を使った会席など、丁寧に作られた和食が好まれ、特に落ち着いた空間での食事体験に価値を感じる傾向があります。中でも人気なのが「すき焼き」ですが、実はこの料理には文化的な認識の違いもあります。
台湾で“すき焼き(壽喜燒)”と言えば、しゃぶしゃぶのような鍋料理を指すことが多く、日本の甘辛い割下で肉を煮て生卵にくぐらせて食べるスタイルは、初体験の人にとって驚きがあるようです。中には「生卵をそのまま食べるの!?」と戸惑う台湾人もいます。台湾では生卵を食べる文化が一般的ではないため、日本のすき焼きの食べ方は珍しく、初めて見ると抵抗を感じる人もいるようです。しかし、実際に食べてみると「思ったより全然おいしい!」「まろやかになってびっくり」とポジティブな反応も多く、特別な体験として記憶に残っているようでした。
こうした日本独自の“食文化体験”は、シニア層の旅行に深みを与える要素となっており、「特別な一食」を求めて日本を訪れる動機にもつながっています。
- 高級寿司(東京・銀座)
- すき焼き・しゃぶしゃぶ(神戸・松阪)
- 会席料理(京都)
(4) 宿泊は快適さを重視!高級ホテル・旅館が人気
シニア層の宿泊先選びは「快適さ」と「サービスの質」が重要なポイントです。五つ星ホテルや温泉付き高級旅館など、快適で上質な空間を求める傾向があります。少し金額が上がっても、質の良い宿を求めるニーズがあります。
シニア層をターゲットにした旅行会社が組むツアーでも、”5つ星ホテル(五星級飯店)”というキーワードを大きく掲示して集客をしています。”高級ビュッフェ”、”温泉”などの文言も同様に欠かせないでしょう。
- 高級旅館(温泉付き)
- 五つ星ホテル
- サービス重視の宿泊施設
(5)買い物も娯楽 一部で“爆買いシニア”の存在
シニア層にとって旅行中のショッピングは重要な娯楽となっています。円安も後押しとなり、人気お土産を買い求める人はやはり多いです。お土産文化もありますので、家族友人へのお裾分けにと大量にお菓子を購入する人も多いです。
実際にあったエピソードを紹介します。50代の男性3人組による東京旅行では、買い物を最優先にしていて、高級ブランド店を次々と回り、ロレックスの腕時計を購入していました。外国人旅行者の免税制度をうまく活用しつつ、観光よりも“価値ある買い物”を重視するスタイルで、「温泉でのんびり」だけではない、アクティブなシニア層が一部存在していることも事実です。
4.若者とシニア層、日本旅行の楽しみ方の違い比較
5.まとめ:台湾人観光客のニーズに応じたプロモーション戦略を
台湾人観光客をターゲットにする際は、若者とシニア層のニーズをしっかりと把握し、それぞれに適したプロモーションを行うことが重要です。
- 若者向け: SNSでの発信が重要。フォトジェニックな観光地・カフェ・アクティビティ情報を定期発信すること。
- シニア層向け: 癒しの旅・グルメ・温泉・上質な宿泊施設をキーワードに、高級志向にも対応した情報提供を心がけること。
こうした世代ごとの特徴を活かしたプロモーション戦略を立てることで、より多くの台湾人観光客の満足度を高め、日本へのリピート訪問へとつなげることができます。