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目次
・本テーマの記事を見ることで身につく知識
- 訪日外国人は何を見て日本旅行のプランを決めているのか理解できる
- それぞれの国で影響を受けている情報元が理解できる
- それぞれの国で効果的なインバウンド集客手法が俯瞰的に理解できる
1.参考にしている旅行情報の情報源
インバウンドオンラインマーケティング専門家、秋山光輔です。訪日外国人観光客が「旅行の行き先」「どこに泊まるか」「何を食べるか」「何を買うか」など、「どこのどんな情報を参考に旅行プランの意思決定をしているのか?」『参考にしている旅行情報の情報収集源』について解説を行います。まずは訪日外国人観光客全体を対象とした「出発前に得た旅行情報源で役に立ったもの」を多い物から順番に並べてみましたので見てみましょう。(2019年度版)
出典元:日本政府国土交通省 観光庁
2.国別に分けて比較して見ることで実態をつかむ
次に訪日外国人観光客トップ5のそれぞれの国のデータを比較しやすいグラフで見ることで国毎の影響力の違いをなんとなくざっくり把握してみましょう。訪日外国人観光客数のトップ5である、中国、韓国、台湾、香港、タイのデータを1つのグラフにタブでまとめました。このように1つのグラフ上で比較して見ることで俯瞰的にイメージを掴む事ができます。それではこれらの数字を元に、その実態をイメージしていきましょう。
3.共通して影響力が強い情報源を理解する
トップ5すべての国で「出発前に得た旅行情報源で役に立ったもの」の上位にあがるのが、
- SNS(朱色)
- 自国の親族・知人(青色)
- 個人のブログ(紫)
です。これらを大まかに言い換えるとこうなります。
- SNS→口コミ
- 自国の親族・知人→身内の口コミ
- 個人のブログ→ブロガー記事
この3つを少し具体的に説明していきたいと思います。
3-1.インバウンドPRを行う上で影響力の強いSNS
SNSを口コミと大まかに言い換えていますが、これはfacebookやInstagramの事を指しています。トップ5全ての国で共通して、SNSの情報が「旅行の意思決定に強く影響を受けている」という事がわかります。そして中国のSNS事情については特殊です。中国では国の規制によりGoogleやfacebook、Instagramが使えませんので、中国の場合のSNSはweibo(微博)やwechat(微信)のことを指します。SNSとはその名の通り「ソーシャル・ネットワーキング・サービス」の略で、誰かと繋がり、日記を書いたりしながら、情報交換や会話を楽しむプラットフォームです。ちなみに私が住んでいる台湾のfacebook利用率は人口シェア率85%を超えており、アクティブ率、人口比率共に世界トップクラスです。国によって利用されているアプリは違うとはいえ、SNSの影響力の強さがわかる資料です。※twitterは日本と米国でしか流行ってませんので除外されます。
3-2.アジアでは身内(自国の親族・知人)の情報の信頼度が非常に高い
自国の親族・知人というのは、まさに身内からの口コミのことです。特にアジア圏の中でも中華圏は昔から「身内の口コミの影響力が非常に高い」と言われています。グルメの話や旅行先のおすすめを聞いたりするのはもちろんのこと、結婚式場を選ぶ時までも身内からの口コミを参考にする文化があります。上記のデータを見ても、中国、台湾、香港での身内からの口コミの影響力が高いことがわかります。
3-3.ブロガー記事がインバウンドPRで最も人気の理由は専門性と情報量の多さ
トップ5全ての国で共通してブロガー記事も、「旅行の意思決定に強く影響を受けているものの1つ」と言えます。理由としてはいくつかありますがポイントとなるものをいくつか記載します。
- 中華圏ではマスへの信頼度が高くない中で、消費者代表として個人ブロガーが信頼を集めていった。
- 検索エンジンにアーカイブされるのでSEO(検索エンジン上位表示)に強い
- テキストや画像でわかりやすくまとめられるため、情報が深くかつ多い。
- リスト化したりスクショしやすい、探している情報の横断がしやすい(→情報整理しやすい)
4.特徴的なデータを分析してみる
次に代表的なデータ以外の特徴的なものも見てみましょう。再度同じグラフを貼り付けます。
- 中国以外は「動画サイト」(オレンジ色)の影響力が高い
- 中国、韓国、タイでは「日本在住の親族・友達」(緑)の影響力がやや高い
- 台湾、香港では「テレビ番組」(オレンジ色)の影響力がやや高い
4-1.中国以外は「動画サイト」(オレンジ色)の影響力が高い
中国以外は「動画サイト(オレンジ色)」が上位にランクインしています。これは主にYoutuberによる動画コンテンツの配信です「Youtuberによる動画配信」は「旅行の意思決定材料」に強い影響力を持っていることがデータから見てとれます。ただしYoutuberによる動画配信はブロガー記事と並行して対策されることが多いですが、ブロガー記事とはKPIが異なることに注意してください。Youtuberによる動画配信は話題性向上や周知、拡散がKPIとなります。動画コンテンツですので、ブロガー記事のように細かな情報整理は向いてませんが、「何かを話題にする力は非常に強く、テーマがハマると反響も高い」です。しかしその反面、動画の企画力が非常に重要になります。はっきり言い切りますが、人気のYoutuberだからといって単純に商品を紹介してもらうだけでは今は反響はとれません。Youtubeのアルゴリズムが大きく変わる2017年頃までならチャンネル登録数の多さだけで商品のゴリ押し配信で反響を取るのが可能でしたが、いまはそれぞれのYoutuberの個性を理解した上で、「何(what)を誰(who)にどのようにして(How)で届けるのか」そのテーマや企画の選定、ディレクションをしっかりしないと高い反響は得られなくなりました。補足として、中国は「動画サイト」がランクインしませんでしたが、TikTok(抖音)は中国産のため影響力が強いです。TikTok(抖音)は再生時間が短く、SNSに分類されます。
4-2.中国、韓国、タイでは「日本在住の親族・友達」(緑)の影響力がやや高い
在日中国人と在日韓国人は在日外国人の中でも群を抜いて数が多いです。その理由には歴史的な背景があるかと思いますが、そんな中国や韓国では在日の親戚や友達にアドバイスを求めるようです。以下は法務省が発表している在留外国人統計(旧登録外国人統計)統計表です。
4-3.台湾、香港では「テレビ番組」(オレンジ色)の影響力がやや高い
世界と比較すると日本はかなり番組チャンネル数の少ない国ですので、必然的に番組の視聴率は高くなります。なので旅行先を決める時、TV番組は今もなお大きな影響力を持っていますが、海外を見るとテレビの存在感は国によってかなり差異が出ます。しかし台湾、香港ではテレビ番組の影響力がやや高い事がわかります。
4-4.中国、韓国、台湾では旅行ガイドブック(朱色)もまだまだ人気
旅行はワクワクしながら楽しむものですから、手に持ち運びやすいサイズの旅行ガイドブックはまだまだ人気です、特に旅ナカでもホテルや飛行機などの移動時間を含め接触時間が割と長いのも特徴的です。ネットに繋がらない時や、少し時間が空いた時などにとても便利ですね。あとはほとんどの旅行ガイドブックには地図がついてますので、「安心を持ち運ぶ」という意味でも一冊は旅行先のお供として持たれる場合が多いです。
5.並べ替えて一つのグラフにすることで見えてくるコト
このように日本政府観光局のデータを並び替えて一つのグラフにすることで、これまでぼんやりとしていたものが少し鮮明に見えたり、新しい発見があったりするものです。また、今回は訪日インバウンドの基本となる「出発前に得た旅行情報源で役に立ったもの」について各国の基本的な分析をさせていただきましたが、訪日インバウンド、いわゆる旅行商品だけがSNSやブログ中心に意思決定が起きているわけではないので、この情報は日本に迎え入れたいインバウンド業者様に限らず、台湾や香港やアジアに向けてPR(プロモーション)を効率的に行いたい企業様にとっても大変役立つデータです。
6.今回の記事をまとめると
今回の記事をまとめると「旅行の意思決定に強く影響を与えている」施策は以下となります。
- 各国共通して影響力のあるものは「SNS」「身内の口コミ」「ブロガー記事」
- 中国以外ではYoutuberなどの「動画コンテンツ」の影響力が高い。
- 中国、韓国、タイでは「日本在住の親族・友達」(緑)の影響力がやや高い
- 台湾、香港では「テレビ番組」(オレンジ色)の影響力がやや高い
- 中国、韓国、台湾では旅行ガイドブック(朱色)もまだまだ人気
- インバウンドに限らず、このデータにより国毎で影響力のある媒体を知ることができる
長文になりましたがご一読いただきありがとうございました。次回はこの旅行の情報収集元について台湾にフォーカスして深堀りしていきます。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
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